新建 文本文档_49
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悉长欷蓼菢敗─世щyを乗り越えてきましたが、ゾンビという災害もまた対処しえる対象になったのでございます。
 
 この感動はいち早く皆様にお伝えしたくて仕方ありませんでした。


 車を拾って乗り込んでからは道路もすいており、なんとも快適な行軍となりました。

 窓の外を見れば、モクレン科のキタコブシが白く大きな花を咲かせておりました。

 春でございました。

 色のない早春の森に春の訪れを知らせてくれております。

 希望溢れる春。

 私は心からそれを感じることができたのでございます。

 
 乗り込んだ車中では、私たち夫婦に何か異変があればすぐにでも対処できるよう、兵士たちが銃口を向けておりましたが、私の心は晴れ晴れしておりました。


 「他部隊と交信ができました。報告します。羅臼(らうす)方面に展開していました3番隊、4レディース 靴
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番隊、6番隊、7番隊が全滅。」
兵士の口調に緊張と不安が感じられます。大久保翁はまるで関心が無い様子で、
「そうか。」
と一言だけ応えました。
 「羅臼方面の主力部隊、1番隊が矛先を斜里に変更して現在潜入中。」
「ほう。沖田か???あの小僧も気づきおったか。この先で合流だの。」
「はい。なお、網走方面に展開していました2番隊が音信不通。5番隊、8番隊、9番隊が全滅。以上です。」
「構わん。1番隊と10番隊が残っておれば計画は遂行できる。魏延の件は先に沖田に伝えておけ。あやつらならば坂本を奪取できるかもしれん。」
「了解しました。」


 沖田。


 私は

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第7話

第7話

 中国といえば「三国志」「水滸伝」そして「西遊記」でございましょうか。どれも私の愛読書でございます。三国志には魅力溢れる英雄たちが数多く登場してきますが、中でも曹操孟徳(そうそうもうとく)には惹きつけられる要素が多々ございます。文武両道、教養に溢れ、政治においても戦いの場においても自由奔放、どんな窮地も武と知と人の力で切り抜けてきたその勇姿は歴史上最も優れた英雄のひとりに数えられえると思います。西遊記は比べてファンタジーの要素が強いもののやはり孫悟空(そんごくう)の強さ、天衣無縫(てんいむほう)さに魅力を感じます。西遊記の主役の三蔵法師(さんぞうほうし)は遥か彼方の天竺(てんじく)を目指して旅を続けていくのですが、子ども心に「なぜ筋斗雲(きんとうん)で天竺まで行かないのか」とよく疑問に思ったものでございます。おそらく孫悟空の筋斗雲の力を借りれば一日もかからず天竺を往復できたはずです。かつて日本の民も天竺をユートピアと信じて戦乱を避けて旅を決意した者が多かったと聞きます。天竺とは今でいうインドでございますが、一体彼の地に何があるのでございましょうか。気になって仕方がなかった私は学生時代にインドを放浪したことがあるのでございます。喧騒と混沌の街、数多(いくた)のバイタリティ溢れる人間たち、古代から続く歴史とその建造物、duvetica 店舗
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確かにカルチャーショックは受けたものの私たちの世界と何が違うのかよく分りませんでした。「デリー」も「カルカッタ」も「バラナシ」も同じ人間が同じように希望と苦しみの中を生きているだけでございます。釈迦(しゃか)がかつて初めて説法をしたという「サールナート」の地に立っても私の疑問は解消されませんでした。西遊記の中で孫悟空から筋斗雲で行こうと誘われたときに三蔵法師が答えた言葉が思い出されました。
「苦難の果てに辿り着かぬ限り何も見いだせない」のだと。
結果よりも過程(プロセス)こそが人間にとって大切だと言いたかったのだと思います。私のような修行不足の若造が飛行機で何時間かかけて辿り着いたところで何も見えないのも当たり前でございました。燦然と輝く曹操孟徳像を創り出したのもその卓越した能力ではなく、その生き様、幾多の困難を克服してきた人生そのものでございましょう。
 私にとって中国とは教科書のページをめくるだけでは理解できない物事の象徴のようなものでございました。

 さて、層雲峡(そううんきょう)脱出編のお話を進めていきましょう。

 10月3日午後12時15分。妻の死により私の脱出計画は瓦解(がかい)しておりました。両手に傷を負い、それ以上に心に深い致命傷を負った私は日本人と中国人のハーフである李(り)さんの誘導に従って1階の大浴場の脱衣室に逃げ込みました。疲れとは別の何か底知れぬ引力によって、私は生きる力が吸いつくされる思いでございました。もし妻の遺骸を目前にしていたら私は気が狂っていたことでしょう。
 洗面台の近くに設置されている内線電話が鳴り、私はゆっくりとそこに近づきます。受話器を取った瞬間に丁度切れました。幻聴だったのかもしれません。いや、これまでの全てが幻覚だったのかもしれません。この時の私は現実味(リアリティ)を感じる感覚が麻痺しておりました。私は洗面台の椅子に腰を掛けます。湧き上がってくるのは徒労感だけでございます。
 「山岡さん。私のために奥さんを・・・、ごめんなさい。」
李さんの声。私は洗面台の鏡越しに彼女を見ました。真っ直ぐな瞳が瞬きすることなく私を見つめております。真っ白な頬を涙が流れておりました。
「もし私でよければ・・・。」
含みのある言葉。短いスカートから肉付きの良い太ももがのぞいており私はハッとして目を伏せました。私でよければ何なのでございましょうか。愛する者はそんなとっかえひっかえできる代用品ではございません。私は李さんを救うために妻を犠牲にすることなど考えてもいませんでした。もしかしたら彼女はそう誤解していたのかもしれません。
 さらに口を開いた彼女はまったく別の話題をしてきました。
「こんな時にごめんなさい。山岡さんは二人の男に出会ったと話していましたが、その人たちは今どこにいるのですか?」
鏡越しに彼女を見ることに罪悪感いっぱいになった私は振り向いて彼女と対峙します。それにしてもなんというスタイルの良さなのでしょう。膝を崩して座っている姿も一枚の絵のようです。モデルをやっていると言われても疑問を挟む余地はありません。しかし、妻を亡くしたすぐ後だというのに私は何に感心しているのでしょうか。首を振って雑念を払います。
「沖田春香(おきた はるか)くんのことですか。」
「おきた・・・。」
「ええ、7階で出会った少年です。もう一人は確か桂(かつら)さんと言いました。連絡を取っていないのでどこにいるかはわかりません。おそらくこのホテルのどこかにはいると思います。」
私はなるべく丁寧に話をしました。この期に及んで紳士ぶるつもりはありませんでしたが、変に馴合って誤解されることも嫌でした。
「その人たちは何者ですか?」
「国防軍関係ですよ。沖田くんは父親が将校だと話していました。桂さんはその部下だったようです。」
「国防軍・・・。」
その言葉を発したときの李さんの目はまるで鷹のように鋭かったことを覚えております。理由は今でもよくわかりません。ただそれも一瞬のことで、彼女はまた柔和な表情に戻り、私に微笑みます。
「ごめんなさい。こんなときに。今は奥さんのご冥福を祈りましょう。」
別な話題をしてもらったほうが気が晴れたというものです。彼女の言葉で私はまた重い気持ちに戻りました。それを察して彼女が立ち上がり私に近づいてきます。長く美しい脚が、伏せた私の視界に入りました。彼女が優しく私を抱き寄せます。豊満な胸の感触が私の額を通して伝わってきます。艶容(えんよう)な香りが鼻孔をくすぐります。私は罪悪感の塊になりながらも彼女の為すがままでございました。
「山岡さん、助けに来てくれてありがとうございました。」
彼女の髪先が私のうなじをなでます。私は何かに必死に耐えました。それは本能のようなものを抑えつけるようなものだったと思います。彼女が耳元で吐息を吹きかけながら中国語で何かを言いました。I LOVE YOUのような響きがしました。
 「ビビビ、ビビビ」
静寂を破り、電話が鳴ります。今度は急いで受話器を取ります。受話器の向こうからは太い男の声が聞こえてきました。
「おお、よかった。繋がった。あんたは山岡さんか?山岡朝洋(やまおか ともひろ)さんか?」
いきなり自分の名前を呼ばれて私は驚きました。声は明らかに高橋守(たかはし まもる)とは違います。
「そうです。山岡ですが・・・あなたは?」
「おお、よかったよかった。やっぱり山岡さんか、よかったなあんたの旦那は生きていたぞ。」
旦那?電話の向こうの人にかけた言葉のようです。奥からは泣きじゃくる女の声も聞こえてきました。聞きなれた声・・・。
「俺は駒田光(こまた ひかる)ってもんだ。410号室に住まわせてもらっている。あんたの奥さんは無事だ。窓から俺が救出したよ。」
「・・・・・・。」
私は声を出そうにも胸が詰まって何も喋れません。駒田は電話を替わりました。
「トモ!!大丈夫け!?」
妻の声でした。もう生涯聞くことはできないと思われていた妻の声です。自然と涙が溢れました。
「・・・そっちこそ大丈夫なのかい?落ちたのかと思っていた・・・。」
私は必死に声を振り絞ります。
「大事な荷物は落ちちゃったさ。」
「荷物・・・だったのか・・・アヤちゃんが落ちたのかと思ったよ・・・。」
「そんなわけないでしょうが。心配してたけ?」
「なまら心配してた。」
お互いに涙と笑いでごちゃごちゃになりながらの会話でございました。
「駒田さんに助けられたさ。」
「そっか。よかった。早く合流しよう。」
「そんな急いじょ。駒田さんには3歳のあすみちゃんっていう女の子が一緒だから窓から下りるのは無理。」
「無理って・・・ずっとそこに居るわけにはいかないよ。明日までには脱出しないといけないんだから。」
「わかってるけど・・・。」
その瞬間、李さんが通話を強引に切りました。私が反論しようとするのを喋るなという合図をして、代わって静かに口を開きます。
「やつらが入ってきました。山岡さん逃げましょう。」
低い唸り声が聞こえてきました。ひとつではございません。私は静かに受話器を洗面台に置き、その場を離れます。

 妻の生存を知って喜びに沸いたのも束の間、今度は私が絶体絶命の窮地に陥ったのでございます。

 時刻は間もなく午後1時をまわるところでございました。

 私は李さんと共にこの修羅場を逃げ回ることになるのでございます。今考えると彼女は私の理解できる範囲外の人だったように思えます。

 国防軍の層雲峡攻撃までちょうど24時間をきったところでございました。

 この続きはまた次回とさせていただきます。
 それでは一度失礼させていただきます。


N4527BC-45
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Sense45

 
 俺が降り立った場所は、自身の店【アトリエール】の中だ。俺のゲームサイクルは、この場所でアイテムを調合することから始まる。

「キョウコさん、こんにちは」
「ユンさん、こんにちは。今日は遅いですね」
「用事があったんですよ。売れ行きどうですか?」
「午前中に少し来ましたよ。ただ、殆どが初心者ポーションの購入者でしたけどね」

 そう言って肩を竦めるキョウコさん。それは、第二陣の人だろう。その中からリピーターや口コミでお店の事が伝われば良いんだけどな。
 余りに人が来なさ過ぎて在庫になっているハイポとMPポーション。マギさんの所には、需要があるからとブルポを卸しているが、それ以外も卸した方が良いかと思ってしまい、すぐに首を振る。
 いけない、いけない。何のために店を立てた。これからも委託販売はして貰うが、アトリエールの方が主体だ。と自分に言い聞かせる。

「どうしました。ユンさん」

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葛藤を心配そうに見つめるキョウコさん。なんか、悪い事した気分になり、雰囲気を変えるために声を明るくする。

「何でもないよ。それじゃあ、明日にでもブルポの材料と一緒に薬草を多めに買ってきてくれますか? 初心者ポーション補充するんで」
「分かりました。じゃあ、これが今日の収穫です」

 俺は、渡されたアイテムを見る。
 上質な薬草系のアイテムは、そのまま使ったら効果が非常に高くなるけど、オーバーヒールなんて余り求められない。だから俺はあえて、錬金センスの下位変換で量で二倍に増やす。

「錬金って何時見ても凄いですよね。二倍に増えるんですから」
「前は使い勝手悪くて悩んだ物だよね。あははははっ」

 前に、全然伸ばす事が出来ずに悩んだりしたが、今では逆に合成のセンスの方が伸び悩んでいる。
 俺は、数を増やした薬草や買い揃えた材料で、アイテムを生産していく。その間、五分もないだろう。ただ、アイテムのランクが低いためか、調薬センスのレベルが上がらない。今度時間を取って、調薬研究でもしようか、と悩む。
 その前に、調合キットのグレードを上げないといけないが。

「今日は、何しようかな。また金策に奔走するか」
「マギさんの所に配達するついでに顔を出したらどうですか? 色々と話もあるでしょう」
「そうだな。そうするか、じゃあ、行ってきます」

 アイテムを持って俺は店を出る。今日は、通りに人が多かったために走り抜けるのは諦めた。みんなパーティーを組んだり、装備を整えたり。
 露天のプレイヤーも声を高らかに客寄せしている。うーん、俺は客寄せとかあんまりしてないな。やっぱり必要か?
 そう言った考え事をしながら、マギさんのお店【オープン・セサミ】へと辿り着いた。

「マギさん、いますか?」
「やぁ、ユンくん。久しぶりだね。NPCに配達任せてからあんまり来ないから心配したよ」

 心配とは口では言うが、にこにこ笑顔。どっちかって言うと俺との話を楽しみにしている感じだ。

「まあ、話して来たら。って提案されちゃいました」
「NPCって結構自立しているからね。この前なんて、うっかりして失敗した時、店員にしこたま怒られたもの」
「ご愁傷様です」
「うんうん、分かってくれるかい?」

 俺達は、そうやって会話を重ねながら、アイテムを納品。ブルーポーションは材料も安く、効果も高い、マギさんのお店は人が来るので、飛ぶように売れる。同じ効果なのに、やっぱり宣伝が足りないか。

「うちの方では、全く人が来ないんですよ。どうしましょう」
「私はまだユンくんのお店見た事ないけど、どんな感じ?」
「あっ、スクショあるんで見ますか?」

 俺は、マギさんに見えるように自分の自慢の店と畑のスクショを提示する。
 青々と茂る薬草。最近、実を四つ作るようになった活力樹。そしてこじんまりとした木造店舗は、俺の愛すべき店。

「すっごい、背景っぽいんだね」
「……そうですよねー」

 一般人の視点から言えばそうなのだろう。あー、空が青いなー。
 俺が一人黄昏る姿を見て、マギさんが慌てる。

「い、いや、良いと思うよ! こう、味があるって言うか。何と言うか」
「良いんですよ。店はあばら家ですし、アイテムの購入制限数設けたり、全部店員に投げっぱなしだし、宣伝してないし。来るのは、妹のパーティーメンバーですよ。委託販売の方が収入の割合が大きいんですから」
「ユンくん、提案があるんだけどね。エンチャントストーンもここに置いてみない?」
「エンチャントストーンですか? 伝言で言ってましたよね」
「うん。ちゃんと使い方の説明とお店の宣伝してあげるよ。うちは金属製品メインだから、上昇させるステータスは、アタックとディフェンスの二つだけで良いからさ」

 うーん、魅力的な話だ。そう言ったアイテムの存在が知られれば、他の魔法攻撃や魔法防御のアイテムを求めて【アトリエール】に来て貰える。そして買えるのは現在、うちの店だけなので、リピーターが増える、ついでに後衛ならMPポーションを買ってくるはず。

「……でもな」
「なにか、気になることでもある?」
「いや、作る分には良いんですけど、あれって、生産と言うよりも魔法を施すイメージの方が強いんですよ」
「それって、どういうこと?」
「薬草が百個あれば。スキル使えば、百個一度に初心者ポーションに変えられるけど、エンチャントストーンは、石単体に対象を選択して、魔法を施さなきゃいけないんですよ。だから、めんどくさいし多く作ると時間が掛る。まあ、一個一分程度ですけどね」

 それも研磨と染色込みでだ。この見栄えに関しては、絶対に譲らない。やらなければ半分に時間で済み筈だ。

「いいよー。それじゃあ、私がこの人には! って人に渡すよ」
「じゃあ、明日からの納品で良いですか? あと使った時の感想も聞ければ嬉しいです」
「りょーかい。お客さんも来た事だし、またね」
「はい、ではまた」

 そう言って俺は、店を後にする。
 俺は、迷うことなくポータルへと向かい、第二の町へと転移する。
 一瞬で牧歌的な風景に切り替わる。モンスターを狩って金策に明け暮れるのも良いが、一日中日向ぼっことか良いと思ってしまう。

「でも、金無いんだよな。それに、石も調達しないと」

 俺は、そのまま、町の中心部へと向かう。すぐに、周囲の森に入るのも良いが、これも金策のうちだ。

「こんにちは、マーサ」
「あら、ユン。こんにちは」

 バスケットを持った恰幅の良い中年女性に挨拶をする。この人は、パン屋のマーサだ。クエスト用のNPCだ。

「今日も配達ありますか?」
「あるある。と言いたい所だけどね。大体、午前中に終わっちゃったんだよ」
「あー、そうですか」

 このマーサの配達クエストは、一日一回受けられる地元住民のクエストだ。第一の町でも似たようなクエストはあり、町中でアイテムを渡していけば、お金が貰える簡単なクエスト。第一の町では、千Gだが、ここでは、その二倍の二千G。
 ……なにっ? 少ないだと。塵も積もれば山となる、だ。それに、出先のNPCは、完全にランダムで色々な物をくれたりもする。
 この数日で貰ったものは、羊皮紙のノートや普通の野菜だ。この土地柄が良く出たアイテムだと思う。

「いや……あるにはあるんだけどね。場所が……」
「どこですか?」
「川に行っているヒュステル爺さんにランチのサンドイッチを届けて欲しいんだけど、爺さん除虫剤使っているから安全に川に行けるけど、私は除虫剤無くて届けられないんだよ」
「それって森の中を通るってことか?」
「そうだよ。ユンは、冒険者だけど、あんまり危ない事はね」

 心配してくれるが俺が逃げに徹すれば、足の遅い虫程度からは余裕で逃げ切れる。その前に、狙い撃つけど。

「引き受けるよ。サンドイッチの配達引き受けます」
「ありがとう、じゃあ、よろしくね」

 紙袋を受け取った瞬間からクエストが始まる。俺は、ランチをインベントリに収めて、川の場所に向かって走る。
 町を抜け、鬱蒼とした森に入り込む。
 この森のMOBには、グレイラットほどの大きさの麻痺攻撃を持つ芋虫のパラライズ・キャタピラーや一定距離近づくと、弾丸のように体当たりをかます蝗(いなご)のバレット・ロコスト。
 ドロップアイテムは、芋虫の方からは糸や虫肉が。蝗の方からは、蝗の身体と足が手に入る。
 芋虫の方は、まあ裁縫に使ったり、調薬に使うだろう。蝗の身体方は食材。足は、調薬用のアイテムだ。あれだよ、蝗の佃煮とかあるし、まあ、ありだろう。
 最後に、こいつが出てきたら厄介な敵がブル・ビートル。成人男性以上の大きさと黒く光る硬い殻に覆われた身体。一度、戦ったが、あれは逃げるに徹する。
 だって、あいつ硬くて矢が弾かれる。さらに、羽を開いて、狭い樹との間をかなりの速度で突撃してきて、奴とぶつかった樹が倒れるんだ。
 だが聞け。ただ倒れるんなら俺も驚きはしない。むしろ、奴の突撃を樹は一度耐えている。その後、角の先端から毒液を噴出して、樹が腐り落ちて、倒れたんだ。
 攻撃通らない、更に状態異常攻撃持ち。それは逃げるが勝ちだ。飛ばなきゃどの虫も遅いし、そもそも照準の定まらない攻撃で自滅する時がある。

 この森のボスMOBはまだ見ていないが、ミュウたち曰く強すぎてまだ無理。とのこと。俺の技量では、カブトムシにすらは攻撃が弾かれるのでボスとなど戦うつもりはない。

 そんな森の敵を遠距離で適当に倒しながら、指定された場所を目指す。

 森の切れ目、光の差し込む場所。そこが目的地だと分かり、俺は駆け足になる。森を抜けた瞬間に、肌で感じるひんやりとした川の湿気。町の中を流れる川よりも幅が広く、流れが急なそれは、渓流と称するに相応しい。
 その渓流の傍にある大きな岩に腰を掛けて釣りをする老人を見つけた。

「こんにちは、ヒュステルさんですか?」
「そうじゃが、どうしたんじゃ」
「お昼のサンドイッチの配達です」

 俺がそう言うと、ヒュステル爺さんは、嬉しそうに振り返った。

「飯をすっかり忘れてた。ありがとな、お嬢さん」

 この爺さんの対応は、とても紳士的で好感が持てる。ただし、残念。爺さん、俺は男だ。

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第一部 8.遠のく瞳−4

 人間二人がすれ違うには狭すぎる地下階段が暗闇の奥に伸びていく光景を思い出すたび、ゴーティスは屈辱と怒り、とほうもない悲しさで胸がふさがれる。後宮内にあるどの地下通路も王城の外に直結してはいないが、東館か本館か、ともかく、いずれかを経由して、ジェニーは王城の外に脱け出たのだ。狭く暗い通路を通っての脱出も、彼女の勇気をもってすれば難しいことではない。
 ジェニーの侍女はまだそう信じている口ぶりだったが、ゴーティスはジェニーが地下のどこかでさまよっているとは全く考えなかった。賢い彼女は地下にはりめぐらされた迷路のような通路を長時間かけて調べ――ゴーティスには彼女にそれほどの用意周到さがあるとは考えにくかったが――そして、経路を突き止めたに違いない。彼女はその手間さえいとわず、埃っぽく真っ暗な地下通路を延々と歩くことを選んでまで、ゴーティスのもとに留まるのを拒んだのだ。
「あの、王……?」
 前方から掛けられた声に、ゴーティスはテーブルに落としていた目線を上げた。焦点のあったゴーティスの目に、近衛兵の証である青い制服が目に入る。そして、ゴーティスと目が合うと、男がひるんだように慌てて頭を下げた。
 ライアンからの遣いとして、執務室に入室許可を与えられた男だった。どれぐらいの空白の時間が過ぎたのかは知らないが、男はそこでしばらくつっ立っていたらしい。
 ゴーティスは目の前に誰かがいながら思考が飛んでいた自分に腹が立ち、短くため息をついた。男が何度も瞬きして動くまつ毛を目にして、ゴーティスは体を伸ばし、椅子の背もたれに背を預ける。
「ライアンニューバランス 1300
ニューバランス シューズ
ニューバランス アウトレット
の報告とは?」
 ゴーティスが口をきくと、男ははっとして顔を上げた。男の表情から、ジェニーが見つかったという報告ではない、とすぐに悟る。
「申し上げます」彼は敬礼し、言った。「国の全ての関所で、女と同じ身体的特徴を持つ者は全員拘束するように伝令を出しました。ラニス公領地にある国境沿いの山々には捜索隊を派遣し、また、ベルアン・ビルと旧ヴェスト地区にも別部隊を向かわせ、到着次第、あちらでの捜索を開始する予定でおります」
 たかが一人の女のためだけの、大掛かりな捜索。
 それは口惜しくもあり、ばからしくもあるが、皆が恐れるヴィレール王ゴーティスを手玉に取ったジェニーにはそれもふさわしい気がする。
「捜索方法は任せる。俺が欲しいのはあの女の身柄だけだ。俺に差し出される瞬間まで意識が残っておれば、それでかまわぬ」
「ははっ」
 男がうやうやしく返事をした。
「報告はそれだけか?」
 ライアンらしからぬ報告だ、と思いながら、ゴーティスは男をうかがい見た。捜索状況を伝えるためだけに早馬を走らせるような彼ではない。
「いえ、もう一件。その、それが例の女だという確かな証拠はないのですが……気になる目撃情報がありまして」
 男は歯切れが悪いだけでなく、その顔には恐怖が入り混じった緊張を浮かび上がらせていた。ゴーティスは男を促すように頷いた。
「聞こう」
「は。女の姿が消えた日の早朝のこと、ヴィスコンデール近郊の農家の庭先に干してあった服が何者かに盗まれたと役所に届け出がありました。ちょうど家の裏手にいた幼い息子が、まだ若く、明るい色の髪で、上等な服を着ていた女を目撃しております。その服は農夫が売ってしまったとかで手元には残っていませんが、ただ、その、彼女には連れがいまして……。その、共にいたのは痩せた金髪の男で、背中の、肩の近くに痣があったそうです。痣の位置から、それが罪人の証である焼き印ではないかと農夫が疑い、役所に報告したために今回の件がわかりまして――」
 男はゴーティスと目が合い、顔をこわばらせて口を閉じた。ゴーティスは彼をちらりと見ただけなのだが、彼はゴーティスから顔をそらすように顔をうつむかせる。
 ゴーティスは、しかし、男がもたらした情報にそれほど驚かされはしなかった。いや、正確に言えば、驚きはしたが、ジェニーの逃亡した事実以上に衝撃を受けなかった。誰かの手引きがなければ王城からの逃亡は完遂できない、と想像していたゴーティスの考えをあらためて裏打ちされただけだ。
 あの女は――どこまで驚かせてくれるのだろう。
 報告を聞き、ゴーティスは腹が立ちはしたが、一連の行動をやってのけた彼女を崇(あが)めるような気持ちすら覚えた。今頃になって、自覚していた以上に彼女が好きだったのだ、と気づかされた。そして、ゴーティスは今、彼女がますます好きだった。
「それを、ライアンはジェニーとみなしているわけか」
「は、はい」
「その可能性は高かろう」
 近衛の男が驚いたように顔を上げた。
「ジェニーを国境の外に絶対に出さぬよう、捜索を続けろ。その罪人は、見つけ次第、必ず殺せ」
 男は返事をし、退室していく。
 扉が閉まり、ゴーティスは窓の外に目を向けた。広大な青空には、白い雲が一つだけ、ゆっくりと手前に流れてきている。後尾を指で引っぱられたような、雫の形にも見える雲が、ゴーティスの方に向かってだんだんと近づいてきていた。だが後部の丸い部分はいつまでもそこに留まり、雲が流れてくるにつれ、先端部分が細く長く尖っていく。
 ふと、ゴーティスは、ジェニーの捜索など中断し、彼女の望むままにさせた方がいいのではないか、という思いにとらわれた。この捜索の末に彼女が捕らえられれば、彼女は間違いなく断罪される。王である夫に手をかけた母親のときと同様に、ゴーティス自身が彼女の断罪を選択することになる。
 母親の場合は許されざる罪を犯した経緯があったにしても、一般論としてはどうであれ、ジェニーに対してそれがはたして正しいことなのかどうか――。

 数日間、ゴーティスは迷い、考えていた。ジェニーが城内にいないと確信しつつも、そのときはまだ、頭の片隅のどこかで、ジェニーがそのうちにひょっこりと顔を出すのではないかという虚しい幻想を抱いていた。王命により閉め切られたサロンの扉を見れば、サロンも主人ジェニーの出現をひたすら待っているかのように思えた。
 ゴーティスはジェニーを待っていたのだ。
 もしもジェニーが突然にゴーティスの前に再び現われて、地下で迷って困っていた、などと言おうものなら、ゴーティスは彼女をすかさず怒鳴りつけ、文句を散々わめき散らした後で、死ぬほど心配した、と恥をしのんで言ってやるつもりでいた。

 そして、ジェニーが行方不明となって一週間が経とうとする頃、ゴーティスはサンジェルマンの部下の訪問をひっそりと受けた。国外にいるサンジェルマンが出先でジェニーの逃亡を知り、捜索隊に合流するという連絡だろうか、と予想しながら初対面の男の前に出ると、男は厳しい顔を崩さず、ゴーティスへの挨拶も早々にこう告げた。
「王、五十二号が逃亡いたしました」
 男のはっきりとした口調が、ゴーティスが記憶の底に沈めていたある男の存在を無理やりに引き上げた。
 思い出したくもなく、口にものぼらせたくない存在だ。
「何を――言うておる?」
 一度は腰を浮かせた椅子に何とか体を落ち着かせ、ゴーティスは不快な思いをさせた男に苛立って、彼をにらみつけた。しかし、彼はゴーティスの反論など聞き入れないというように態度を崩さず、厳(おごそ)かな口調で繰り返した。
「五十二号が逃亡したのです、王。看守に傷を負わせて脱獄しました。城内のあらゆる場所を捜し回ったのですが、いまだ、行方がつかめておりません。我々の不徳の致すところで……誠に申し訳ございません」
 ささくれだった冷たい手で心臓を掴まれることがあれば、きっと今のような気分だ。
 ざらついた胸の内が、冷たさと接した面から急激に体温を上げていくのをゴーティスは他人事のように冷静に感じとった。
「それはいつの話だ」
 男は垂れた頭をあげ、ゴーティスに答える。
「剣技大会の最終日前夜です」
 ゴーティスは胸にわきあがる熱い気に耐えられず、額を押さえて椅子から立ち上がった。静かに起きたはずが、椅子は彼の足の後ろにひっくり返って倒れた。椅子が床とぶつかる衝撃音が耳に届くと、強烈な怒りがゴーティスの胸の中全体にあっという間に広がる。
 ゴーティスは男の横を通り抜け、執務室の扉を開け放った。「誰かおらぬか!」
 室内での物音に反応したらしい近衛兵が二人、控え室に待ち構えていた。それに加え、侍従長が心配そうに両手をすり合わせている姿も見える。
「おまえたち、今すぐに馬を用意しろ! 今すぐに、だ! 俺もライアンの部隊へ合流する!」
 侍従長は何か言いたそうだったが、ゴーティスは彼をまるっきり無視した。男たちが走りさり、それから、ゴーティスは室内にまだ残っているサンジェルマンの部下に振り返る。彼の他の部下たちと同様に肝のすわった男なようで、ゴーティスの怒りを目の前で見ても怯えた様子は見せない。ゴーティスは男につかつかと近づいた。
「おまえたちは何をしておったのだ! あんな腰抜けに脱走を許すとは何たる失態! よいな、どんな手を使うても五十二号を捕らえ、確実に息の根を止めろ! 絶対に逃すでないぞ! 五十二号を殺すまで城に戻れると思うな! よいか、万が一、もしもあの男を仕留められないときには、おまえたちは――その一家全員も、死に目に遭うと心得るがいい……!」

 出発の準備が整えられるまでのほんの短い時間、ゴーティスは自室に戻り、部屋にある窓から空を見上げた。王城の建つ地方は、夏の期間はほとんどが晴天で青空が広がることが多い。今日もまた抜けるような青空で、ゴーティスから見える空には雲ひとつ浮かんでいない。
 そうやって空を見上げているうち、ゴーティスはなぜか笑いが止まらなくなり、体がそれに伴って震え始めた。晴れ上がった青空に目がくらんだ。ゴーティスは視界からそれを隠すように両手で目を覆い、両目に押し付けられた手には体の震えが伝わってくる。
「よもや――ケインと逃げるとは!」
 その後もしばらく、笑いは続いた。体の震えも止まらない。
 だが、ゴーティスは無駄に体の欲求に逆らうことはしたくなかった。笑いたいなら、笑えばいい。
 戸口で誰かがゴーティスを呼ぶ声がし、出発の準備が済んだことが知らされた。ゴーティスは顔を覆った手の下から返事をした。そして、窓辺から離れようとしたそのときになって初めて、視界がかすみ、手のひらが冷たくなっていることに気づいた。ゴーティスが不思議に思って手のひらをよく見ると、両手ともに、透明な水で濡れている。ゴーティスは、泣いていた。
 ゴーティスは唇を噛み、窓の外に再び目を向けた。青空を目にするとあらたな涙がにじみ、彼の視界はいっそうぼやける。体も震えた。それでも、この眩しい青空から目をそらさず、脳裏にこの光景を焼きつけておかねばならない。
 ――自分のものにならぬジェニーを、自分の手で殺してしまうために。

  ◇  ◇

 遠目から見た低い山は、実際に入っていくと緑が深く、どこまでも上り坂が続くように思えた。そのせいで広野を駆け抜けるのと同じ速度で馬を進めることはできないが、徒歩で山越えをするよりはずっと速い。ケインによると、この山を越えた先の国境には関所が設けられているそうだ。ただし、関所を避けて越境する者は後を絶たないらしい。
 ケインが一緒にいてよかった、とジェニーは心の底より思っていた。彼の存在があるおかげで、ジェニーは身の安全が確保され、寂しさを感じずに旅を続けてこられている。二人であるために、旅行者として不自然に映らない。そして、彼はこの地方に度々来たことがあるらしく、近辺の事情にも通じている。土地勘もないジェニーだけでは、何日たってもヴィレールから抜け出せなかっただろう。
 山に入ってから休憩もとらずに馬を進ませ、服の下にうっすらと汗をかいてきた頃、ジェニーと併走していたケインが不意に振り返って、手招きした。ジェニーが馬の手綱をしめて足並みを止めつつ彼を見ると、彼が、獣道のような脇道にそれていこうとしている。
「どこへ行くの?」
「道は悪いけど、こっちの方が近道なんだ」
 ケインがにっこりと笑ってそう教える。
 ジェニーは彼の背後にある獣道の先を眺めた。二人のいる場所は日光がさんさんと降りそそいでいたが、その先は木々の濃さが徐々に深まっていく。
「来て、ジェニー」
 ジェニーを急がせるように、めずらしく苛立ちを含んだ口調で彼が言う。
「うん」
 ジェニーが馬の腹を蹴るのを見届け、ケインは自分の馬を促し、先導をとって脇道に入る。彼が馬を操る仕草で、ジェニーには彼がまた焦っていることがわかった。国境を前にして気が急いているのに違いない。
 日なたより日陰が多くなってくると、それまでの疲れが心地よい気だるさとなってジェニーの手足の先に充満していった。辺りは静かで、小鳥のさえずりや動物の動きまわる音がしない。馬が草や落ち葉を踏みしめる音のほかに、何も聞こえなかった。山が静まりかえるというのはなんだか奇異に感じられる。山は侵入者の二人の存在を知って、じっと息をひそめているかのようだ。
 二人の通る道はそれまでと比べて道幅が極端に狭く、体の間近にまで伸びてきている枝をよけながら行かなければならないのに、ケインの歩みは速かった。彼の進む速度はそれまでとほぼ同じだ。そして、彼はジェニーに一度も振り返らない。
「もう少し待って、ケイン!」
 馬五頭分ほどの差をつけられたとき、ジェニーはついに前方の彼に叫んだ。すると彼はすぐに手綱を引いて馬を止め、くるりと後方を振り返った。それから、彼の右手に広がる林の方を、何かを探すように見つめる。
「ケイン?」
 彼に近づきながらもう一度彼の名を呼ぶと、ケインが無言で、唇に人差し指をつけた。ジェニーははっとした。急に彼の性急さの理由を理解したように思え、彼がそうしたように、右側の林の中をそっとうかがい見てみる。光が細長い線となってところどころに差し込む木々の間には誰も何もおらず、動く影もなく、特に異常は見られない。ジェニーがケインに視線を戻すと、彼はジェニーの馬の足取りを注意深く見つめていた。
「ごめん、ジェニー。少し気が急いていたみたいだ」
 ジェニーがケインに追いつくと、彼が申し訳なさそうに小声で謝った。それはいいの、とジェニーは言い、彼が気にする、右側に傾斜していく林を再び見やる。
「それより、何か――誰かいるの?」
「……裾野の方から馬が二頭、それに、上の方にも何頭か――数はわからないけど、たぶん、さっきの道を移動してきてる」
 ジェニーが驚いてケインの目を見つめると、彼はジェニーに小さく頷いた。
「追っ手かもしれないってこと?」
 ジェニーが訊くと、ケインはやるせなさそうに息を吐いて空を見上げ、口惜しそうに答えた。
「下からの二頭はそうだと思う」
「ケイン、でも、なぜそれが追っ手とわかるの? あなたの耳がいくらよくても、音だけじゃ――」
「さっきの町でサンジェルマンに会ったんだ」
 ケインはジェニーの問いをさえぎって言い、ジェニーが驚いた反応を見せると、苦笑した。ジェニーは言葉が出ず、ただただ驚いて、彼を見つめる。
「彼を当然知っているよね? 私はさっきの町で彼に顔を見られた。彼がきみの顔を見たかどうかまではわからないけど、彼は私が王城から逃れたことを知ってしまったんだ、必ず私を追ってくる。私に王城の外で生きていられては困るんだ。彼は私を捕らえ、今度こそきっと、亡き者にしたいはずだ」
 ケインは自分の身に迫る危険を人ごとのように淡々と説明する。ジェニーは迫りくる不安に寒気を覚え、鳥肌のたった腕を押さえた。
「上から近づいてくる者たちは誰なのかわからない。旅行者か地元の者か、それとも山賊なのか。どちらにしろ、用心にこしたことはないと思う」
「……ええ、そうね」
 急ごう、とケインはジェニーを促し、背中を向けた。ジェニーも彼に続いて、馬を進ませる。
 ジェニーは彼の無言の背中を見つめ、それから、自分の背後に広がる木立をこわごわと振り返った。明るい林は静まりかえっている。それを目と耳で確かめると、ジェニーは前方を行くケインの背中をまた見つめた。
 “サンジェルマンが、追いかけてくる”
「ケイン」
 ジェニーが辺りをはばかって呼びかけた小さな声は彼の耳に届いたようだ。ケインが馬を止めずに振り返る。
「ケイン、あなたは……何者なの?」
 ジェニーの投げかけた質問に、ケインは困ったように笑った。少しうつむいた彼の表情が、ジェニーがどこかで見たことのある男の顔に重なる。
「私が怖い?」
「ううん、そんな意味じゃないの。でも、サンジェルマンから命を狙われるなんて――」
 ケインが遠くを見つめるような目をして、だがすぐに、嫌なものから目をそらすように両目を閉じた。
「ごめん、今は何も言えない。でも、国境を越えたらきっときみに事情を話すよ。約束する」
 彼の困ったような、悲しさを含んだ笑顔を見て、ジェニーはそれ以上、何も追求できなかった。
 
 ケインが選んだ近道を通り、二人は遅くともその日の夕方には二つ隣の山に渡り、国境を越える計画でいた。ところが二人は、次の日も、そのまた次の日の朝も山中にいた。ケインにひどい腹痛と発熱があり、途中で足止めをくらったのだ。
 今の季節の山は食料にはことかかない。ケインを介抱する合間に、ジェニーは近くの野いちごや木の実を採集し、今までの空腹を取り戻すかのように夢中でそれを口にした。空腹が満たされるにつれ、ジェニーは自分が相当に疲れていたことに気づかされた。この機会に乗じて休息できることをありがたく感じた。
 その後、ジェニーが心身ともに癒され、ケインの熱が下がって何とか移動できるまでに回復したのは、ジェニーがケインに折り重なるようにして眠りに落ちて目覚めた、二日目の朝のことだった。
 それから二人は、それまでの遅れを挽回しようと進行速度を上げ、隣の山に移動した。この山の麓が二人の目指す国境だ。
 周囲に気を配り、なるべく人目につかない道をとって二人が進んでいくと、途中から湿った空気に変わった。馬の歩く道が湿り、そのうち、濡れた地面に移り変わる。ジェニーの真上にある空はもう青かったが、こちらの山では雨が降ったのだ。濡れた土の匂いが地面からたちのぼっている。
「ここで待ってて」
 ジェニーを残し、ケインが山を下る道を確認しに見晴らしのよい地点に行った。この山の反対側は国境とつながっている。二人が自由を勝ち得るまで、あとほんの少しの辛抱だった。
 ほどなく、ケインがひどく落ち着かない様子で小走りで戻ってきた。その彼の青ざめた顔を一目見るなり、ジェニーの胸に鈍痛が走る。
「何かあったの?」
 ケインは衝撃を受けたように顔をあげ、ジェニーをそのまま見つめた。遠くからは小鳥が幸せそうにさえずる声が聞こえてくるのに、ケインはなんて悲しそうな顔をしているのだろう。
「ジェニー」
 ケインの声を聞くとジェニーの鼓動は一気に加速した。一言も聞きもらさないようにと、ケインの唇を注視する。
 ケインは泣いてはいなかったが涙をぬぐうような仕草をし、ジェニーを避けるように地面を見つめた。その沈黙が耐えられない。ジェニーが、もう一度彼に声を掛けようとしたときだ。
「麓に青い制服姿の部隊が見えた。あれは近衛隊、それも、たぶん……王軍だ」
 ジェニーは言葉を失い、ケインも無言で、気が抜けたようにお互いを見つめた。頭の中が空白に変わり、手をどう動かして手綱を扱い、足をどうすれば馬から降りられるのかさえ、そのときのジェニーにはわからなかった。
「ジェニー」
 ケインの声で我に返り、ジェニーはとっさに後方を振り返った。
 後ろからはサンジェルマン、前方には近衛隊。国境線は、近衛隊の向こう側だ。
 ここで、ぐずぐずしてはいられない。
 でも――じゃあ、私たちは、どちらに進めばいい……?
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ここまで読み続けていただき、本当にありがとうございました。
いよいよ、次回が第1部の最終話となる予定です!
次回の話は少し長くなってしまうかもしれませんが、最後までぜひぜひおつきあいくださいませ♪

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うのだ。
「千春ちゃんとずっとね」
「ずっと?」
「そう。ずっといたいと思うけれど」
「そうね。それはね」
「千春ちゃんもなんだ」
「毎日会えるけれどそれでも」
 どうかとだ。千春はここでは俯いて言うのだった。
「御別れの時はね」
「その時はだよね」
「寂しいから。とても」
 それでだというのだ。
「だからいつも一緒にいられたら」
「そうだね。それはね」
「希望もなのね」
「うん、そうなんだ」
 こう話す希望だった。
「やっぱりお別れの時はね」
「寂しいティンバー 靴
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のね」
「寂しくて。それに」
「それに?」
「辛いよ」
 この気持ちもあるというのだ。希望に。
「とてもね。だからなんだ」
「千春と一緒に」
「いたいんだ。ずっとね」
「そうなれたらいいね」
「ううん。なれたらいいんじゃなくて」
 ここでは希望からだ。こう言ったのだった。
「なろう」
「なるの?」
「うん、なろう」
 微笑んでだ。こう答えた希望だった。
「絶対にね」
「そうね。なれたらいいんじゃなくて」
「千春ちゃんがいつも言ってる通りね」
「なるものよね」
「自分からね。そうだよね」
「うん。千春ちょっと忘れてた」
 少しほろ苦い顔になってほんの少しだけ俯いて言う千春だった。
「なるものだよね。何でも」
「僕。なるよ」
 顔をあげてきた千春のその顔を見ながらだ。希望は微笑んで答える。
「絶対にね」
「千春と一緒にいられるように」
「いつもね。そういう風になるから」
「わかったわ。じゃあ千春もね」
「そうなる為

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受け止め方があったのだろう。

「私の場合はアメリカ人が大半なんだけど???。」
美由紀は、また源次郎の顔を見ながら言う。

「ええっ! アメリカ人?」
今度は源次郎がそう応じる。目を見て言われたのだから、何かを言わなければならない。

「そうよ。中でも、黒人は陽気でノリが良いから好きよ。」
「黒人さんと???、お付合いがあるんですか?!」
源次郎は、迷ったものの、そう言ってしまう。
そんな話、初耳だったからだ。

「うん、特に、横須賀の舞台なんかだと、半分以上はアメリカ軍の兵隊さんだもの???。」
「へ、兵隊???。ああ???、な、なるほど???。」
源次郎も、横須賀と聞いて、それは納得できた。


神奈川県横須賀には、大きなアメリカ軍基地があった。
そして、平成の現代でもそれは存在する。

第二次世界大戦で敗戦ティンバー 靴
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国となった日本は、アメリカを中心とした連合国の支配を受ける。
その連合国が真っ先に押さえたのが、日本が持っていた軍事設備だったことは言うまでもない。
そのひとつが、この横須賀海軍基地だった。

この横須賀という港町は、1865年に江戸幕府がここに横須賀製鉄所を作ったことで、それからの歴史に何度も登場することになる。
1871年にはここに造船所が作られ、1903年からは大日本帝国海軍が横須賀海軍工廠として使い始め、以降、海軍航海砲術学校、海兵団、海軍工機学校などが併設され、一躍日本帝国海軍の一大拠点となっていく。
もちろん、第二次世界大戦においても、この横須賀基地が果たした役割は非常に大きかった。

そんな海軍基地である。
連合国が放っておく筈もなく、戦後間もなく、連合国のリーダー的存

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恧Δ趣嗡激い舷à胜盲俊?

(仕方が無い???、出るか???。)
源次郎は一呼吸してからドアを開けた。

と、予想していなかったことが待ち受けていた。
そう、部屋の明かりが消されていたのだ。

「??????。」
源次郎は、驚いたにも拘らず、一言も声が出なかった。
いや、出せなかったと言うべきだろう。
いわゆる“絶句”である。

取り敢えずはそこから出る。
普通ならば、そこでその浴室への扉は後ろ手でも閉めるのだが、今そうしてしまうと何もかもが見えなくなる。
で、半分ほどを閉めて、そこから洩れ出す浴室からの明かりを残すようにする。
もちろん、そこの壁モンクレール ダウン 2013
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についている浴室の明かりのスイッチには触れもしない。
で、美由紀がいるであろう部屋の中を、その浴室からの明かりを頼りに窺うようにして見つめる。

どうやら、美由紀はベッドの中にいるようだ。
狭い部屋の中に、美由紀の姿はなかった。
そして、ベッドに掛けられていた白いカバーが、人ひとりが隠れているように膨らんでいるのがおぼろげにだが確認できる。

源次郎は、まずはほっとする。
何はともあれ、美由紀がそこにいることだけは分かったからだ。
数日前、言葉の行き違いからか、小樽のホテルでは美由紀にトイレに立て篭もられたことがあった。
そのことがふと源次郎を不安にさせていたからでもある。


源次郎は、自分が脱いだ物を置いていた椅子を目指して数歩歩く。
パンツぐらいは穿こうと思ってだ。


(つづく)




第2話 夢は屯(たむろ)する (その967)

ところがだ???。
その椅子のところまで行くと、脱いだままで放り出していた筈の衣類が綺麗に畳まれていた。

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過去60年間の動向を。

終わりにプレーオフのレイダースとナイキレギュラーシーズン長期的に設定されています。入札プロセスに向かって導いたプロジェクト;理事会投票数年間ツェッペリン支払明細ダウン12予算で

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残りは歴史である。 今日では

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第十二話 大鎌その十三

「特にな」
「今まで通りいつも通りってこと?」
「そうだ」
 静かに妹に答えた。
「それはな。変える気はない」
「テニスとかフェシングにはそういう気遣いはないの」
「食べられるものは何でも食べる」
 語るその目が不意に強いものになった。
「そうしないと。生きていられない」
「それって大袈裟じゃないの?」
 兄のもう一つの顔を知らない彼女にとってはそう聞こえる言葉だった。
「生きていられないって」
「そうか」
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「そうよ。まあ今は食べましょう」
 あらためて兄に告げた。
「早く食べないと折角の料理が冷めちゃうわよ」
「ああ、わかった」
 妹の言葉に頷きそのうえでまた食べはじめた。鰯も味噌汁も実に美味かった。この時は兄妹で楽しい夕食の時を過ごした。それから数日後だった。
 休日の昼にサイドカーで道を進んでいた。趣味のドライブである。そこで長いトンネルの中に入った時だった。道の真ん中に一人立っていた。
 牧村はその者を見てサイドカーを止めた。丁度その者のすぐ前でだ。見るとそれは小柄な男であった。
「危ない・・・・・・という忠告は無用のようだな」
「その通りだよ」
 小柄な男はヘルメットを脱ぎながら話す牧村に楽しそうな声をかけてきた。
「僕はね。そういうのが大好きだから」
「好きか」
「だって人間じゃないから」
 こう牧村に返すのだった。hermes 財布
「だからさ。ここにいるんだ」
「魔物としてか」
「中国から来たよ」
 彼はまた言った。
「九尾の狐様に呼ばれてね」
「あの女からか」
「僕の名前は妖犬」
 己の本来の名も告げてきた。
「覚えておく必要はないよ」
「それは何故だ?」
「だって君死ぬから」
 牧村を完全ニコ馬鹿にした言葉だった。
「ここでね。僕の手でね」
「そう言って己が倒れた者は見てきた」
 牧村はサイドカーから降りつつその妖犬に言葉を返した。
「よくな。貴様もその一人になるか」
「自信家だね。そういうのって好きだよ」
 やはりその言葉の調子は変えない。
「僕もね。自信家だから」
「だから闘うというのか」
 サイドカーから降りてから妖犬と対峙しだした。
「容赦はしないぞ」
「遠慮してもらうのは嫌いだからいいよ」
「それでは。はじめるか」
 牧村は早速両手を動かしだした。そうしてその両手を拳にして胸の前で打ち合わせる。するとその両手から白い光が放たれ全身を包み込んだ。それが消えた時。異形の天使がいた。
「・・・・・・行くぞ」
 右手を少し前に出し開いてから握り締める。牧村来期は髑髏天使にその姿を変えたのだった。
「髑髏天使だね」
「その通りだ」
「格好いいね。その髑髏にあっちの鎧が」
 自分の国である中国から見ての言葉だった。
「いい感じだよ。それじゃあ僕も」
「むっ!?」
「本来の姿に戻るよ」
 こう言ってその身体を白い煙で覆った。それが消えるとそこには。黒い毛を持ちその身体を中国の鎧と兜で護っている犬が姿を現わした。
 その犬は二本足で立ち手に槍を持っている。確かに異形の姿であった。
「それが貴様の正体か」
「狐と同じで犬も長く生きると力を持つんだ」
 その異形の魔物、妖犬はここでも楽しそうに笑いながら髑髏天使に語った。
「僕みたいにね。僕は三百年生きているよ」
「三百年か」
「九尾の狐様よりはずっと短いけれど」
 このことは言いながら少し照れ臭そうだった。
「けれど。君よりはずっと長いから」
「一つ言っておく」
 髑髏天使に対しては優位性を述べてきたが彼はそれを平然と受け流したうえで逆にこう切り返してみせたのであった。至極冷静に。

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第二十二話 策には策でその六

「左様、ただ」
「ただ、何じゃ」
「少しばかり術が使えるだけでございます」
「そしてその術でか」
 信行はここでようやく立ち上がった。そのうえで彼に問うのであった。
「それがしをか」
「その通りでございます。勘十郎様に謀叛を起こさせ」 
 実際にだ。彼自身の口から述べられていく。
「そうして尾張を乱すつもりでした」
「やはりそうであったか」
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 それを聞いてだ。頷く信長だった。そうしてそのうえでだ。
 津々木を見据え今にも斬らんとする姿でだ。また彼に問うのだった。
「それではまた聞こう」
「今度は何でしょうか」
「何処から来た」
 次に問うたのはこのことだった。
「そなた、どの手の者じゃ」
「それがしがどの大名の手の者かというのでしょうか」
「大名とは限るまい」
 信長は他の勢力の可能性も頭の中に入れていた。国人や町衆、寺社、それに忍の里にとだ。戦国には様々な勢力があるからだ。
 それでだ。彼は問うたのであった。
「他にもおるな」
「少なくともどの大名でもありませぬ」
「違うと申すか」
「左様。それがしはそうした場所にはおりませぬ」
「ではどの場所におる」
 信長は彼にさらに問うた。コーチ coach バッグ
「それを言うがよい」
「さて、何処でございましょう」
「言うつもりはないか」
「多くを言うつもりはありませぬ」
 こうだ。津々木は慇懃だが妙に陰のある声で述べるのだった。
「ですがこう申し上げておきましょう」
「何とじゃ」
「それがしは闇の中におります」
 こう言うのであった。
「それは申し上げておきます」
「闇とな」
「その通りでございます。ですが」
「ですが。今度は何じゃ」
「残念です。勘十郎様もそれがしに気付かれたようで」
「危ないところであった」 
 信行も剣を抜いていた。そのうえで彼に対して言葉を返すのだった。
「一度は陥ったが二度はだ」
「ありませぬか」
「そういうことだ。そしてだ」
 さらにだとだ。言ってであった。
 津々木を斬ろうとする。しかしだった。
 信長はだ。その弟を止めて言うのであった。
「待て」
「何故でしょうか」
「この男、尋常な者ではない」
 それを見抜いての言葉であった。それでだった。
「迂闊に前に出ては危ないぞ」
「だからですか」
「そうじゃ。ここはじゃ」
「はい、それでは」
 川尻が前に出た。そうして主達に話すのである。
「まずはそれがしが」
「鎮吉、そなたは左じゃ」
 津々木を左から攻めよというのである。
「わしが右じゃ」
「ではそれがしは」
「勘十郎、そなたは真ん中を受け持て」
 彼はそこだというのである。
「よいな、それではじゃ」
「はっ、それでは」
「一人で倒せずともだ」
 そこまでわかっていた。この辺りは流石に信長だった。
「三人ならばどうじゃ」
「確かに。今の信長様達が相手ではです」
 津々木もだ。不敵に笑って言うのだった。
「それがしでは相手にはなりますまい」
「ではどうする」
「観念するか」
 信長と川尻が彼に問うた。その間にも摺り足で間合いを詰めている。

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